英語は世界の共通語

最近、私たちの多くが、情報革命時代のさなかにいることを実感しています。 あらゆる情報が、衛星放送やインターネットなどを媒体として、瞬時に世界中に伝えられるという時代です。 そして、そんな情報のほとんどに英語が使われている事実からも、「英語」が国際語として、ますます身近になってきた時代とも言えるでしょう。
 また、近年「グローバルコミュ二ケーション」という言葉がよく使われています。 国境を越え、地球規模で様々な交流が行なわれるという意味ですが、ここでも共通語は英語になっています。 20年後、30年後に活躍を期待される子供たちは、まさにそんな「グローバルコミュ二ケーションの時代」を生き抜かなくてはなりません。
 現在、英語を公用語にしている国は約60カ国、さらに日常的に使っている人まで加えると、世界の4分の1の人たちが、英語を話していることになります。 この割合は、近い将来3分の1にまで増えるだろうと予測する学者もいます。
 ちょっと海外に出てみるとわかりますが、世界各地のホテルや商店で、その土地の母国語以外にもっとも多く使われているのは英語です。 またビジネスの世界でも、政治の世界でも、ラジオやテレビなどマスメディアの世界でも、異なる母国語を話す人たちの間で、英語は事実上の共通語として使われています。 高度な科学や技術など、人類の持っている知的財産や知的情報の大半は英語で保存されていますし、新しい知識や情報も、英語を使って世界中の人たちに共有されます。 インターネット上の情報の8割以上が英語とも言われています。   
 英語というと、一般的には会話をイメージする方が多いかも知れません。 しかし、世界の人たちと対等にコミュニケーションをはかるためには、単なる日常会話のレベルにとどまらず、様々な人の話す英語を聞き取ることができて、自分の考えを自在に表現したり、大量の英文を読んだり書いたりできる高度な英語力が必要になります。
 そのような英語力を身につける為には、幼児・児童期にいかに抵抗なく英語に触れられるかが、重要なポイントとなります。 つまり、英語を楽しめる環境作りです。 母国語である日本語の力を伸ばしながら、同時に「もうひとつの言葉」として英語に親しみ、これを駆使することができれば、将来への選択肢が限りなく広がるばかりでなく、地球の未来を担う一員として、習慣も考え方も異なる人たちとふれあい、わかりあえるようになることでしょう。
 これからの情報化時代、グローバルコミュニケーションの時代に生きるわが子を、英語で考え、話し合えるように育てることは、親の使命といっても言い過ぎではなさそうです。

■英語を始めるのは何歳から?

 英語が「国際共通語」として重要な役割をはたしていることは、今や誰もが認めるようになりました。 それでは英語を身につける為の学習は、いつごろから始めたらいいのでしょうか。
 「大脳生理学」という人間の脳の仕組みを究明する学問は、1960年代からアメリカを中心に発達してきました。 この分野の研究によれば、人間の赤ちゃんは、およそ140億個の脳細胞を持って生まれます。 その細胞は成長とともに数が増えていくのではなく、それぞれの脳細胞から神経の枝が伸びて、お互いに手を伸ばすようにつながり、複雑にからみあいながら働きが高まってくるのだそうです。 これを脳細胞の発達といい、赤ちゃんが生後に受けるさまざまな刺激、特に愛情のこもった話かけや抱擁など、子とのふれあいの質と量が決定的な意味を持つのです。 この脳細胞の発達は、生後まもなくから急速に進行し、3歳までに70%、6歳までに90%、10歳までにほぼ完成することがわかっています。 昔から「三つ子の魂百まで」(3歳までに作り上げられた性格や基本的な行動パターンは、死ぬまで変わらない)と、ことわざでも言われてきたことが、科学的に実証されたといえましょう。 
さらに最近の研究では、五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)が外からの刺激をキャッチする力や、記憶など基本的な情報処理の力、考える力、学ぶ力、感情の豊かさ、運動能力などの発達には、それぞれ臨界期(タイムリミット)があることがわかってきました。 1970年代に行なわれた実験で、生後まもない子猫が1ヶ月半ほど片目だけで生活させ、その後両目に戻したところ、子猫の片目の視覚が回復することはなかったそうです。 成長した猫では、このようなことは起こらないので、大脳の視覚をつかさどる部分(視覚野)と網膜を結ぶ視神経の回路は、生後のごく早い時期に形成され、猫のタイムリミットは生後45日だということが判明したわけです。
 さまざまな研究によると、人間が母国語以外の言葉を確実に身につけるにもタイムリミットがあり、それは10歳くらいといわれています。 しかし、タイムリミットを待つまでもなく、0歳に限りなく近いとき、つまり早ければ早いほど良いということになります。 

■「覚えても忘れてしまう」のうそ

 ひと昔前までは、「小さいころに覚えた外国語は、早く身についただけ忘れるのも早い」といわれ、この説を多くの人が信じて疑いませんでした。 しかし、大脳の分野の研究がこれほどまでに進んだ現在では、幼児期にインプットされた情報は消え去ることなく、大脳の言語中枢にしっかり保管されていることがわかっています。 多岐にわたる貴重な研究データーも紹介されるようになって、古い説が死説と言えるまでになりました。
 幼児期の記憶が、大脳の片隅にしっかり存在してるという身近な例をあげてみましょう。
 ある日本人が、仕事で海外勤務をすることになった。 派遣先はフランスである。 フランスといえば、その人は、ごく幼い時に父親の仕事の関係で、何年か住んだ事がある。 だが、記憶は薄れ、フランス語も完全に忘れていた。 大学でフランス語を選択したときには、一からはじめたも同然だった。 大学で習い覚えたフランス語で通じるだろうか。 仕事ができるだろうか・・・。 恐る恐る、首都パリに赴任した。 フランス人と話してみる。 まあまあである。 ところが、会って話すフランス人が不思議そうな顔でいう。 「あなたのフランス語には、ほんの少しだが、マルセイユのなまりがありますね」驚いた。 幼児期に家族とすごした土地が、マルセイユなのだ・・・。 言葉は、使わなければ忘れてしまうが、舌が覚えた発音は、話してみるとよみがえる。 それを実証するような話である。 (朝日新聞「天声人語」より)
 文豪森鴎外のまごにあたる、早稲田大学理工学部教授森常治氏は、若いころアメリカ中西部の田舎町にあるスモール・カレッジの教員として滞在したことがあったそうです。 当時5歳だった氏の長男は、その町の幼稚園に通いましたが、はじめは英語を話さず、沈黙を守るのみでした。 それが半年もすると、早口でまくしたてるほどの使い手になっていたそうです。 その後帰国して英語を使うチャンスがなくなり、すっかり忘れたように思われていましたが、中学校で正式に英語を学ぶようになるとめきめき上達、早期英語教育の効果が現れ始めたそうです。 このような体験から森氏は、幼児英語教育はかくあるべしと、次のように提言しています。
 幼児の英語教育に、即効性を求めてはならない。 大切なのは幼児期に学んだ英語学習のほのかな記憶、全感覚器官が覚えているような記憶である。 いや、学習と言ってはまずい。 すべてが暖かみに包まれてみえる幼児期の世界の中で、かつておこなわれたささやかな英語体験とでも呼ぶべきものであろう。 そして、このような幼児期における体験のさだかならぬ記憶こそ、何にもまして我々の一生を強烈に支配するものであることは、心理学者の説明を待つまでもなく明らかなことだ。

■子供は言葉を習う天才

 ある有名な心理学者の「外国語をいかに学ぶべきか」という講演の後、一人の聴衆がたずねました。 「外国語が上手な人の頭の中って、いったいどうなってるんでしょうか」心理学者はにこっと笑って、ウィンクしながらこう答えました。 「なーに、人よりちょっぴり子供っぽくできているだけですよ」
 言葉を覚えるという点に関して、子供が大人よりずっと優れていることをユーモアたっぷりに表現した、興味深い一言です。 言語を効果的に学習するには、次の5つの条件をそなえていることが必要であるといわれています。
 1 まねることが上手であること
 2 聴覚、発音の器官が柔軟であること
 3 機械的な学習にあきないこと
 4 繰り返しの学習にたえられること
 5 失敗や誤りを恐れたり、恥ずかしがったりしないこと

 子供が「言葉を習う天才」であるのは、このすべてを先天的に身につけている為だといえます。 子供の聴覚は、大人には想像できないほど鋭いものです。 特別な訓練や教育がなくても、話しかけられた音を聞き、言葉が使われる場面を経験するだけで、5歳くらいまでには母国語の基本を習得してしまいます。 音楽の分野では、年齢とともに絶対音感の習得が難しくなることが知られていますが、これは外国語教育、特に外国語の音声教育にも当てはまることなのです。
 早期教育の大切さは、多くの人々によって唱えられ、それに関する本も数多く出版されています。 特に音楽や、音を抜きには考えられない語学の場合、早い時期を逃すと、同程度の力を得るのに何倍も何十倍もの努力を要求され、ある能力には、後になっていくらがんばっても取り返せない部分もあるようです。
 セオドール・アンダーソンという学者は、「物事をひとつのパターンとして丸ごと覚えてしまう能力」は、0歳に近ければ近いほど優れている。 それに対し、「理屈で覚える能力」は年齢とともに高まり、10歳を境にしてその能力は逆転するという説をとなえています。 語学(ことば)には、理屈でおぼえるより機械的に学習していく面が多いいため、10歳以前にはじめるべきだというのが結論です。
 さらに、子供の心理的、社会的な面から考えても、幼時の時期は英語を学習するのに最適だといえます。 絵本の犬の絵を見て、「いぬ」と教えるのと同時に「dog」と教えることができて、子供も何の抵抗もなく「いぬ」も「dog」もおぼえることができるからです。 数に興味を持ちはじめたこどもなら、1,2,3・・・と一緒にone,two,three・・・と数えてみたり、身近にあるものを使って、色の名前などを教えたりするのは、親の心がけ次第で誰にでもできることです。

■日本人の「英語オンチ」3代理由

 「日本人は英語は読めるが、話したり聞いたりするのはだめ」といわれてきました。 なぜこれほどまでに、日本人は英語をはじめとする外国語の学習が苦手なのでしょうか。
 外国語の学習にもっとも必要なのは、聞く能力です。 日本人の聴力は、世界の人々と比較するとひどく貧弱だといわれています。 幼児期における聴覚の形成過程から、その原因を考えて見ましょう。
[第1の理由] 日本人は、日本語以外の言語を聞く機会がほとんどないまま育つからです。 ほぼ単一民族、単一言語である日本に比べると、欧米をはじめ多くの国々では複数の人種が入り混じり、さまざまな言語が飛び交っています。 たとえばスイスには、フランス語、ドイツ語、イタリア語の3ヶ国語を話す人たちがたくさんいますが、それは公用語であるというだけでなく、日常的に3ヶ国語を耳にしているからに他なりません。
[第2の理由] 日本語が世界でも「音韻の種類がもっとも少ない」言語のひとつだからです。 たとえば、日本語の母音はあいうえおの5音しかありませんが、英語の母音は、二重母音を合わせると、およそ20音もあります。 子音にしても、英語には日本語よりはるかに多くの音韻が存在します。 さらに、日本語は英語などに比べ、抑揚(イントネーション)に乏しい言語です。 最近の音楽で、英語の抑揚をわざわざ真似た歌が多いのは、日本語の歌詞が音楽的でないためだといえましょう。
 耳には、はじめからさまざまな音を聞き分ける能力が備わっているわけではありません。 妊娠7ヶ月ころから育ち始める赤ちゃんの聴覚は、誕生後急速に成長を遂げ、幼児期までに、その基礎が形成されます。 そしてさまざまあ音を聞くことにより、それらの音を正確に受け取る機能が、大脳の神経細胞に備わっていくことがわかっています。 ですから、毎日豊富な音韻を聞いて育った子供の耳は、豊富な音韻を正確に聞き分ける能力を持つようになります。 一方、乏しい音韻だけ聞いて育った子供の耳には、豊富な音韻を聞き分ける能力が育たないといってよいでしょう。 それは、日本人であっても、幼児期に外国語を耳にして育った人たちが、外国語を聞いたり話したりできるようになっていることからもわかります。
[第3の理由] 大多数の人たちが、これまで中学生になって初めて英語を習ったからです。 そして、次々に高度な知識を要求され英語を楽しむ余裕などないこと、さらに点数で評価を受ける「勉強」として付き合い始め、高校、大学入試を目指した「受験英語」しか学べなくなってしまうことも原因です。
 以前、グレゴリー・クラーク氏が多摩大学の学長に就任したとき、大学入試に英語を課さないことが大きな話題となりました。 中学・高校と間違った方法で学んだ生徒の英語力など、テストしても無駄、大学に入ってから正しい英語教育を始めるというのがその理由です。 クラーク氏もまた、英語を学ぶ時期は早ければ早いほどいいと、力説されています。

■バイリンガルの子供の育てかた

 よく知られるように、カナダの国語は英語とフランス語です。 そのため、英語とフランス語の2ヶ国語を自由に操る「バイリンガル」の子供達がたくさんいます。 モントリオール脳神経外科学研究所のペンフィールド博士は、そんなバイリンガルの子供たちを3年間にわたって研究し、次のようにまとめています。
 幼児は生まれてから数年の間に、耳で聞き、自分が真似て話したことを記録する言語の神経回路を頭の中に形成する。 これらは、運動回路、思考回路などそお他の神経回路と密接につながっている。 外国語をそのままの形(直説法)で学ぶ子供たちは、6歳以下であれば頭の中にもうひとつの回路、第2言語回路が開けるため、2ヶ国語でも3ヶ国語でも正しい発音で自由に話せるようになる。 たとえば6歳以下のこどもで、家族とは英語、学校ではフランス語、お手伝いさんとはドイツ語で話す環境にあったとしたら、それぞれを難なく覚えてしまう。 幼児の頭の中に、言葉を切り替えるスイッチがあるからだ。 ところが6歳を過ぎると、この切り替えスイッチが働かなくなり、聞いた外国語をいちいち翻訳する作業をとうさないと(間接法)、第2外国語を学ぶことができなくなる。 大人の頭がいかに優れていても、言葉に関する能力に限っては、幼児に遠く及ばない。
 英語の早期教育に反対する人の間では、早期の外国語教育は母国語の発達をそこなう、母国語教育こそ先決だという意見があります。 しかしそれは、本当のことなのでしょうか。
 やはりカナダのビールとランバートという学者は、英語あるいはフランス語しか話さない、モノリンガルの10歳の子供と、バイリンガルの10歳の子供のIQを、カナダ各地からサンプリングして比べてみることにしました。 調査に先立って2人の学者は、これまで言われてきたようにモノリンガルの子供のほうが、バイリンガルの子供よりIQが高いだろうと予測していました。 ところが、結果はまったく逆だったのです。
 バイリンガルの子供は、言葉を混同して言語障害を起すどころか、むしろ2ヶ国語を知った為に言葉が豊かである。 従来いわれてきた、幼児期から2ヶ国語を教えるとどちらの言葉の発達にも悪影響を及ぼすという信仰は、誤りといわざるを得ないと発表しています。
 脳障害時の治療と幼児能力開発で、世界的に著名なグレン・ドーマン博士もまた、幼児の言葉を学びとる能力がどんなに優れているかについて、次のように述べています。
 普通の子供は1歳から5歳までの間にひとつの言語をほとんどマスターする。 2ヶ国語を使う家庭で育った子供は、6歳になるまでに両方の言語を覚えるだろう。 3ヶ国語を使う家庭で育ったら3ヶ国語、4ヶ国語なら4ヶ国語・・・となる。

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