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イギリス料理のまずさは、昨日今日始まったことではない。
第2次世界大戦中、ヨーロッパ戦線のメイン基地となったロンドンには多数のアメリカ兵が駐屯していた。
休暇になればアメリカ兵たちはアイルランドのダブリンに飛んでいった。ただ食事をするためだけに・・・
イギリス料理と聞くと何が頭に思い浮かぶだろう。フィッシュ&チップス、ローストビーフなどであろうか。
そして必ず出る言葉に「不味い」というものがあろう。日本人だけでなく他の欧州人たちも口をそろえて口にする。
何を隠そう当のイギリス人たちでさえ食事の不味さを国民的ジョークとして自虐的に口にする。なんだ、わかってるじゃない。
本当のところどうなのだろうか。結論から言おう、「美味くない」「不味くない」、これが答えだ。
なら「普通」なのか? それは正しくない。なぜなら、イギリス料理にはもともと味がないからだ。
イギリス滞在経験のある方ならこの言葉の意味がご理解いただけるだろう。なぜ味がないのか?
答えは2つある。1つは「味がなくなる料理法」、そして「味付けをしない」である。
解説すると、イギリス料理の基本は「焼く」「ゆでる」である。問題は「ゆでる」。
最近は変わってきたようだが、伝統的に野菜は30分、1時間平気でくたくたと煮られてきた。
野菜の味は栄養もろとも鍋の煮汁に流れ出し、頂く際には煮汁は流し台にうまみと栄養もろとも捨てられている。
今でもお年を召した方はこのような調理法だ。
一昔前の料理の教科書にも「キャベツは最低30分は煮ること」と真顔で書かれていたらしい。
最近BBCの教育番組のCMで、このような調理をする祖父に向かって
孫が「おじいちゃん、ブロッコリーは15分以上煮るとビタミンの半分が流れるのよ」と意見する場面がある。
ようやく煮物に関しては改善されてきた観がある。
さて「味付けをしない」ということだが、簡単に言うと「味付けは料理人の仕事ではない」ということだ。
料理人の仕事は「しっかり火を通すこと」に徹している。調理はしても調味はしない。
同じような例に「朝鮮冷麺」がある。タイの「クイッティヤウ」もそうである。どちらも麺であるが、
命とも言うべきスープには味がついていない。自分で用意された調味料で味をつけるのだ。
美味い、不味いはまさしく自分の「さじ加減」にかかっている。
料理人の責任ではなく、彼らは「加熱」という仕事にのみ責任を負っている。
イギリス料理はこれが徹底している。すべてに「下味」というものがついていないと思ってよい。
すべては調理が完了後、各自で味をつけるのだ。従って料理の最中に塩・胡椒が使われることはない。
つまりは味に関してはすべて「自分の責任」である。
ただ悲しいのはテーブルには塩・胡椒・酢が標準的に置かれているが、
調理後、これだけの調味料で複雑な味を自分で出すのは難しい。
ただ親愛なる英国人がおっしゃるには「変な味をつけられるよりは安心できる。」ということらしい。
従って「料理に味はついていない」ということが基本にあるので、
彼らはスープが出されても味見もせずに塩・胡椒に手を伸ばす。
「塩加減は各自の好みで違うはずだ。」というのが彼らの持論だ。もっともなご意見ではあるが…。
イギリス人自身、イギリス料理が「美味い」とは思っていない。
ある日、子供たちを集めて「どうして観光客はイギリスに来るのかな?」と先生が聞いた。
「天気が良いから?」 「ノー」
「ご飯がおいしいから?」 「ノー」
「歴史があるから?」 「イエース」、
なるほどイギリス料理の「味のなさ」はイギリスが誇る歴史の一部なのである。
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