temptation





「ゾロ〜いるんでしょ?ちょっと来て〜」

甲板の上からゾロを呼ぶナミの声。

「あァ?何だよ?」

「いいから来て〜!」

「ったく、しょうがねェな」

その声にトレーニングを止め、しぶしぶ降りてくるゾロ。



「何だ?」

「ちょっとこれ運ぶの手伝ってくれない〜?」

そう言って部屋に詰まれた本の山を指差すナミ。

どうやら本棚に入れようとしている様子である。


「あァ?んなもん、あのアホコックにでもやらせたらいいだろ」

「サンジ君は夕飯の仕込みで忙しいでしょ?あんたどうせ暇なんだから手伝ってよ」

「どうせ暇って何だ、どうせって。…まァいい。あれを運べばいいのか?」

「うん。せっかくフランキーがこんな大きな本棚つけてくれたんだし、早く入れてみようと思ってね。じゃあとりあえず、あっちの端からよろしく」

そんなナミに面倒くさそうな顔しつつも、指示通りに本を運んでくるゾロ。

言われた場所へ置き、また運んでくるという作業を繰り返す。




「終わったぞ」

「じゃあ次、あっちよろしく」

「あァ?まだあんのかよ」

「当たり前でしょ。だからあんたを呼んだのよ。力仕事得意でしょ?たまには船の役に立ちなさいよ」

「船の役にっつーか、てめェの役にだろ、これ」

そうブツブツ文句を言いながらも、次々と運んでいくゾロ。



「これで最後か?」

「そうね。じゃあ棚に入れてくからそっちの端の分から渡していって」

そう言うと、立て掛けたハシゴに上って手を差し出すナミ。

「ほらよ」

「ありがと」

渡された本を受け取ると、次々と本棚へ収納していく。


「これでこの段は完了ね。じゃあ次、上の段いくわよ」

そして更に上の段に入れようと、ハシゴの段を上がるナミ。

「今度はそっちからよろしく」

そう言うと下にいるゾロから本を受け取り、今度は上の棚に入れていく。


そんな時…。




「どうかしたの?」

ふと、少し視線を逸らし気味に渡すゾロに気づき、そう言うナミ。

「………お前なァ…」

「??」

「…どういうつもりなんだ?」

「何が?」

「そんな格好でそんなとこ上るか?普通」

ゾロが言うのもそのはず、ミニスカートで上るナミに、下にいるゾロからは絶好のアングルとなっていたのである。


「しょ、しょうがないでしょ!ってか、見るな!」

ゾロの言葉に、今更ながら慌てて押さえるナミ。

「見るなっつったって、見えるもんはしょうがねェだろ。つーか何だ、気づいてなかったのかよ」

「わ、悪かったわね」

「じゃあそれは無自覚ってやつなのか?」

「…どういう意味よ?」

「いや、おれはてっきり…」

「何よ?」


「……誘ってんのかと」

そう言って、ニヤっとするゾロ。


「だ、誰が…!!誘ってるわけ、キャ〜ッ…!」

「バッ、お前…!」

ゾロの言葉に動揺したのか、ハシゴを踏み外すナミ。

バランスを失った体はそのまま前へ傾き、下にいたゾロの上に重なる形で倒れこむ。




「…っ痛〜い」

「バカお前、何やってんだ」

「何よ、あんたが悪いんでしょ!あんたが急に変な事言うから…!」

少し顔を赤くして、抗議するナミ。


「冗談だろ、冗談。それよりいつまで乗っかってんだ?早く降りろ、アホ」

「あっ、ごめん」

そう言われて初めて今の状況を理解すると、慌てて離れる。

しかし慌てて離れたせいか、今度は後ろの本棚に頭をぶつけてしまうナミ。


「イタタ……もうヤダ…」

「大丈夫か?」

「うん…」

そう言いながらも、ぶつけた頭をさするナミ。


そんな中…。




「伏せろ…!」

先程の衝動により、崩れ落ちてくる本の山を見て叫ぶゾロ。

「えっ、ちょっと……嫌〜っ!」

そんなゾロの言葉も間に合わず、逃げ遅れたナミは、頭上に降りかかる衝撃を覚悟して身を守ろうと伏せる。


しかし…。




「………あれ?」

来るはずの衝撃が来ない事に、おそるおそる顔を上げるナミ。

そんな視界に映ったのは、自分の盾となって代わりにそれを受けるゾロの姿だった。


「…っ………大丈夫か?」

背中に本の雪崩を受けつつ、ナミに声をかけるゾロ。

「私は大丈夫…、でもあんたが…!」

「大丈夫だ。お前と違って鍛えてるからな、おれは」

「ごめん…、ありがとう…」

少し涙目になりつつ、庇ってくれたゾロに礼を言うナミ。


「そんな表情するな。それとも今度は本当に誘ってんのか?」

「何よ、こんな時にまた冗談…」

「冗談なんかじゃねェ」

先程と違って今度は真剣に言うゾロに、驚くナミ。


「お前にその気がないのはわかった。だが世の中にはそんな風に思う奴が多いんだ、もっと自覚しろよ」

「な、何よ、急にそんな怖い顔で…。だいたいあんたにそんな事…」

「忠告してやってんだ。あんまり男をなめんなよ。いざとなったらお前なんか力ずくでだって…」

「ご忠告どうも。でも、そんなヘマはしないわ」

自分の忠告に対してサラリと答えるナミに、少しイラっとした表情になるゾロ。


「……本気で言ってんのか?」

「な、何よ…。さっきから何でそんな怒ってるのよ?」

「怒ってねェだろ」

「怒ってるわよ!」

「怒ってんじゃねェ、てめェの無防備さに呆れてんだよ。今の状況考えてみろ」

「……っ!」

そう言われてやっと、自分がゾロに組み敷かれる形になっている事に気づくナミ。

慌てて離れようとするも、今度はゾロがそれを許さない。


「こんな状況でもまだそう言うか?」

「ど、どうしたの…?今日のあんた変よ…!」

「変じゃないさ。お前に普段、どれだけ隙があるかを教えてやってんだよ」

「わ、わかったから!今度から気をつける!だから……離してよ」

そう言って、ゾロの下から何とか抜け出そうとするナミ。


しかし…。



「それが油断しすぎって言ってんだよ。おれなら大丈夫とでも思ったのか?」

「えっ…?」

思いがけないゾロの言葉に、目を見張るナミ。


「そりゃちょっと甘ェんじゃねェのか?」

「え、ちょっと……ゾロ?」

さすがに身の危険を感じ、後ずさりをしようとするも動けない。


「何で、こんな…」


「………」


「じょ、冗談でしょ?」


「………」


「何よ、もう……!」


「………」


「や、やれるもんならやってみなさいよ!」


逃げ出せない事を悟ったのか、最後は精一杯強がるナミ。


その途端…。




「…っ……!!!」




いきなりナミの口を塞ぐゾロ。


そのまま、吸いつくすように熱く、長いキスを落とす。




(…ゾロ………、苦しい………)




息をつく事も出来ない長いキスに、しだいに頭がボーっとしてくるナミ。


そして、やっと解放された時には、すっかりのぼせた様子で頬を紅潮させていた。







「悪い、止められなかった。でも、これでちょっとはわかったか?」

起き上がったもののヘタリと座りこんだままのナミに、ゾロが言う。


「………」

しかしナミは、いきなりの事に頭がついていかず、言い返せないでいた。


「言っただろ?あんまり男をなめるなよって。お前にその気がなくても、お前のその格好は誘ってるようにしか見えねェんだよ」

「………」

「お前は大丈夫って言うけどよ、自分が女って事をもっと自覚しろ。今みてェに力ずくでされたら勝てるわけねェんだ、わかったか?」

それだけ言うと、さっさと部屋を出て行こうとする。



「何よ……、バカッ!!」

ようやく落ち着いたのか、そんなゾロの後ろ姿に向かって文句を言うナミ。

それでもまだ心臓はバクバクしている様子で、赤くなっている顔がそれを物語っていた。


「バカとは何だ、バカとは。だいたい半分はてめェが悪いんだろ」

「だ、だからって!本当にする事ないじゃない!」

「だから悪かったって。まぁ事故だと思って忘れろ」


(バカ…、忘れられるわけないじゃない……)

そう言って部屋を出て行くゾロに、心の中でそう思うナミ。



(あんな熱いキス、初めて………)

唇にそっと触れ、思い出すなり再び頬を染める。


そんな中…。




「忘れてもいいが、これだけは覚えとけ。おれは何とも思ってねェ奴にこんな事しねェからな」

一度出ていった後、再び戻ってきてそう言うゾロ。


「あと、これで1回忠告したんだ。今度は止めねェからな。それも覚えとけ」

そしてそれだけ言うと、ナミを残して再度出ていったのであった。















−END−






〜あとがき〜 初書きゾロナミでした。私的にナミCPで1番好きなのはサンナミですが、こっちも好きだったりします。 何ていうかサンジでは出来ない事が出来るので、それぞれに良さがあるな〜と…。 そんなわけで今回ちょっと、半分無理矢理にチューするゾロを書いてみました。 サンジでは出来ないネタですし、そういう乱暴っぽいのはゾロに向いてるな〜と個人的に思ってたりもしますしね。 空島とかでもナミを荒々しく助けたりしてましたし、そういう時のゾロはカッコ良くて好きなもので…vv いかがでしたでしょうか?よかったら感想お願いします。 2007.7 from 明希





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